僕たちが小学生だった頃のある夏の日の事
※全然猫出てこない 創作のような思い出話のような。
↑暑くてグテってる猫
想像してほしい、
あなたはまだ小学生だ。
せっかくの夏休みだから遠出がしてみたくなった。家のベランダから見えるあの森に何があるのか見てみたい。森といっても、少し緑がたくさんあるくらい。なのにみんな森と呼ぶ。
冷蔵庫にある麦茶を水筒に注ぎ込むと、たっぷりの氷を中に入れる。欲張りすぎて少し溢れたりして。ポケットにお小遣いの200円入れる。それから、帽子とハンカチも癖で持っていく。
外に出ると帽子をかぶっても頭に熱がこもって顔が火照るくらいの暑さだ。
たまに吹く風も熱せられたアスファルトのせいで生暖かい。そして、湿気を帯びているせいで暑い癖にどこかジメジメしているのだ。
田舎だからあんまり車は通らないけど、たまに通ると熱い空気を吐き出しているから、避けて歩く。
そのうち公園に着く。長く伸びた雑草の上を歩くと、何かがぴょんぴょんも飛び出して跳ねる。姿ははっきりと見ていないけど、バッタだということが草の動きでなんとなくわかる。
水風船を投げっている同い年ぐらいの子たちを横目に、自分は今から高尚なことを成し遂げるような気持ちで公園を突っ切って進む。
この辺りで、喉が乾く。
水筒を開けると半分くらいの氷が消えていた。ゴクゴクと飲んでまた歩く。
次は田んぼだ、肥料のような匂いと、タニシのピンク色の卵。田んぼの中は青々としていて、緑が伸び切っている。
たまに犬の散歩をしている人にすれ違う。
こんなに暑くても多い。犬飼ってる人ってこんなにいるんだな。
田んぼを抜けると川沿いに出る、光に反射する川は眩しいけれど、見ていると少しだけ涼しくなった気がした。
川沿いを進みきると、もう森は目の前だ。
再びコンクリートを少しだけ進む。急勾配の石段を見つける、大人2人分ぐらいの狭い幅だ。周りには木が植えてある。この先に森はある。途中疲れて足が痛くなるけど進む。
だけど、石段を上がるうちにそれを取り囲む木の数は増えていって、次第に葉擦れの音も大きく聞こえるようになる。
頂上に登るとそこには鳥居がある。
お賽銭をいれるところがあり、ポケットから100円を出して投げ込む。何を祀っているかも知らないけど、目をつぶって拝む。
ふと周りを見ると、木の陰に石でできたベンチがあった。
そこは夏なのにとてもひんやりしている。
座って水筒を開けると中の氷は全部溶けていた。3分の1くらい残して蓋を閉める。
ベンチの上の細かい砂を手で払って横になる。鳥の鳴き声、葉擦れの音。
涼しい風が体を冷やしてくれる。ずっとここに入れそうだ。しばらく横になる。
なんだが自分が世界の一部になっているということが感覚的にわかるような、和やかな気持ちになった。
どれくらいたったのかわからない。
でも陽がさっきより落ちてきてたから帰ることにした。
帰りに駄菓子屋に寄る。ポケットに手を入れるとまだ100円残っていた。
棒アイスを買って食べながら帰る。
食べ終わった後の棒を眺めると当たりだった。すごく幸せな気持ちになった。
嬉しいことにその日の夜ごはんはカレーだった。
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